東武野田線の車窓には住宅地と畑・水田・林が交互に広がる。北側は利根川水域の水田地帯、南側は下総台地の畑作地帯になっている。そこに、戦後東京都心から人口が移動していくムーブメントのなかで住宅地が広がっていった。大宮・春日部・柏・船橋などのターミナル駅近辺の駅から住宅は広がって、今もなお沿線では開発が続いている。古くから開発が進んだ地域では低い木造建築が多く、90年代以降に開発された街区にはマンションや欧風ツーバイフォー建築群が見られる。典型的な郊外の住宅地だ。ただ、東急田園都市線などと違うのは、開発が一体的に進んだわけではないので、古い住宅地の間に欧風の建物群が建てられていたり、畑の間にマンションが建っていたりすることだ。とくに畑作地帯の船橋〜柏は開発が不均等に進んでいる。もともと畑ではない土地のほうが住宅地として開発しやすかったことからそのような土地から住宅が広がり始めた。畑は住宅地の狭間に取り残されることとなり、順次開発された。計画的な開発がなされなかったため、道は狭く入り組んでしまうことになった。(そのような開発が進むことをスプローリングとかいうらしい。)
不均等な開発の象徴たるものが、駅前が開けていない、高柳駅や七光台駅だろう。七光台は本当に周辺に住宅が全然ないのだが、高柳の場合、駅の西側に住宅が広い範囲に広がっているので、乗降客は逆井並みにはある。
このような不均等な開発の結果は乗降客数にも表れる。ターミナル駅のすぐ近くの駅、たとえば新船橋、藤の牛島、八木崎などは乗降客が少ない。これはひとつにはバスなど他の交通機関との競合もあるのだが、必ずしもターミナル駅周辺から開発が進んだわけではないことを示している。むしろ、開発は、駅周辺から虫食い的に進んだと表現したほうがいいくらいだ。
乗客に目を移そう。朝は大体が通勤客だ。ターミナル駅のみ乗客が突出していることはそれを如術に現す。一応運河や岩槻など周辺に高校や大学がある駅もありそういった利用もあるのだが、数としては大したことはない。昼間も多くの乗客はターミナルへと向かっていく。夜は帰りの通勤客で夜まで列車は込み合う。つまり野田線は典型的なベッドタウン路線になっている。
※データ引用:東武鉄道,駅情報(乗降人員)|鉄道事業|東武鉄道,http://www.tobu.co.jp/rail/frail_2_2.html,(2008.11.1)
野田線沿線のターミナル駅から東京駅近辺(日本橋か大手町)までの時間は以下の通り。
時間的にはつくばエクスプレスが最速なのだが、大宮、柏、船橋の各ターミナルはぞれぞれ30分台に抑えてきている。大体野田線でターミナルから10分以内の駅なら東京から1時間圏内に入るということだ。一方、新鎌ヶ谷と春日部は早くて40分台なので、東京から1時間を超えて少し利便性では劣るところがある。
電車の運賃でいうと船橋が一番安いが、江戸時代以来の「隅田川の東」のイメージを引きずっているところがあって、大宮のほうがまだハイカラな気がする。それに、大宮のほうが断然山手側の池袋・新宿・渋谷へのアクセスがいい。
ここから推測できる通り、大宮〜春日部・運河〜柏〜高柳・鎌ヶ谷〜船橋では交通の便がよかったため沿線では住宅が多いが、その他の区間では密集していない。ただ、区間にかかわらず、田畑が宅地化の波の中に残されている。
※データ引用:yahoo!japan 路線検索,http://transit.yahoo.co.jp/,(2008.10.31)乗換時間含まず,平日12時出発で算出
路線総延長62.7km
駅数35駅
平均駅間1.88km(駅数は多め)
ラッシュ時最高5分ピッチ
データイム全線10分ピッチパターンダイヤ
車両:8000系
線路は六実〜逆井間と運河〜春日部が単線で残りは複線になっている。ただ、運河〜春日部間は野田線高速化工事の際に線路改良がなされ、川間〜南桜井は江戸川橋梁を渡った直後に線路がゆるいカーブの分岐機(制限60km/h)で南桜井まで複線のようになっているし、このほかにも、制限60km/hの分岐で駅に進入できるように改良されたり(清水公園・野田市・川間)、脱線ポイントが設置されたたり(七光台・梅郷)している。
運転系統は大宮-柏と柏-船橋に分かれている、直通運転は編成の船橋方送り込みや七光台入庫など最低限になっている。
車両基地は七光台駅北側の七光台検修区。このほか高柳駅北方(七光台検修区高柳出張所)、岩槻駅・春日部駅構内にはそれぞれ留置線があり、日中や夜間は何編成かが停泊している。車輛の検査は南栗橋検修区で行っているので、検査の都度野田線の車両は南栗橋まで回送されている。
8000系が100km/hまで加速するのは、岩槻〜七里くらいで、ほかの区間では大体80km/h止まりだ。90km/h近く出す区間は、鎌ヶ谷〜馬込沢・柏〜豊四季・梅郷〜野田市くらいだろうか。これは駅間が短いためだろう。
鉄橋は大宮側・とくに江戸川を渡った後の埼玉側にはいくつかあるが、千葉側には鉄橋らしい音がするのは常磐線のオーバークロス部分くらいでほかには全然ない。地形的には船橋〜柏以外は平地になっている。
船橋|新船橋|塚田|馬込沢|鎌ヶ谷|新鎌ヶ谷|六実|高柳|逆井|増尾|新柏|柏
柏|豊四季|流山おおたかの森|初石|江戸川台|運河|梅郷|野田市|愛宕|清水公園|七光台|川間|南桜井|藤の牛島|春日部|八木崎|豊春|東岩槻|岩槻|七里|大和田|大宮公園|北大宮|大宮
東武野田線 馬込沢〜船橋の車窓。
平日01運用1301列車
8168F
上で説明している通り、東武野田線の沿線はいわゆるスプローリングの影響で畑の中に住宅街が作られ、いまや住宅地帯のなかにところどころ畑地帯が取り残される形になっている。とくに馬込沢〜塚田のものは千葉県側の沿線ではかなり広大なものだ。動画の中で新船橋周辺には空き地や広大な駐車場が目立つが、それはもともとこの場所には工場があったことを如術に示している。工場は戦前に船橋市の当時のはずれに作られたものだったが、のちに住宅地帯がその周囲を囲んでしまい、土地再利用に伴い大型郊外店舗やゴルフレーン、スーパー銭湯などが出現したものだ。このようにいろいろな種類の建物や畑・緑が混在する、典型的な東京近郊の風景をお楽しみください。
ほかの動画も見る <上の動画のほかにも、船橋〜大宮全線1時間30分の前面展望(上り下り、どちらも13本に分割)や列車の発着風景(8本ほど)もあります。建物と緑と変化に富む野田線の沿線風景をお楽しみください。